モチーフは鳥
動物をモチーフにしたアンティークジュエリーはコアなファンの方が多いです。
彫金技術に長けているアンティークジュエリーでは現代ではありえないように、リアルに動物が描かれたジュエリーも多いです。
今回は鳥。
ぴよぴよとした鳥の愛らしいこと。
餌を探しているのでしょうか。
頭を下げて地面を見つめて様子が描かれています。
全体が艶消しされていて、毛皮に覆われた様子が彫金で描かれています。
ゴールドでできているのに、彫金で様々な角度に模様をつけることもっこりとした身体が描かれています。
小さなブローチの中で立体感もあり、動物の自然なラインを出しています。
くりっとした眼や、キュットしたクチバシ、彫金で描かれた羽。
ぴょこぴょことした脚がチャーミングです。
ヴァンクリーフアーペルの作品で類似したブローチが存在します
ヴァンクリーフアーペルの当時の作品でこのブローチととても似た作品を見つけました。
4番目の写真がオークション会社のカタログで見つけましたVCAのブローチです。
サインも入っておらず、ヴァンクリーフアーペルではないと思いますが、毛並みのあたりまで非常によく似ています。
19世紀後期の推定フランス製。
18カラットゴールドですが、残念ながらおそらく針に打たれていたと思われる刻印が消えてしまっています。
動画は下記をクリックしてご覧ください。
雛(ひよこ)アンティークゴールドブローチの動画
小さな写真をクリックすると大きな写真が切り替わります。
アンティークジュエリーのモチーフになる鳥は、主に鳩(ハト)と燕(ツバメ)です。
特に鳩は旧約聖書のノアの箱舟にも登場することから精霊のシンボルとされヴィーナスゆかりの鳥とされてきました。
16世紀にはサンテスプリ騎士団が着用。
それが広まり、特にフランス北部のノルマンディーの女性はサンテスプリのペンダントをクロス代わりに愛用したといわれています。
鳩をモチーフにしたアンティークジュエリーでは、ノルマンディーのサンエスプリ(Saint Esprit 精霊)が有名です。
サンエスプリは、ノルマンディーはとても美しいジュエリーで、サンエスプリ(聖霊)を象徴する鳩から構成されています。
サンエスプリ(英語読みを活かしてセントエスプリと紹介されることもある)のジュエリーでは一般的に、頭が下部にそして翼は広げられた状態になっていることが多いです。
これは芸術史のなかで、鳩が空から地上へ降りる時、「神の言葉」を伝えるものとして表現されてきたからです。
絵画の中でしばしば、鳩はその口ばしに花のついた枝や葡萄の房をくわえて描かれています。
サンエスプリ(セントエスプリ)の歴史は古く、「1691年にルイ14世が所有していたパリュールの中にもセントエスプリの十字架が入っていた」という記録が残っています。
下記は当店扱いの「サンテスプリ(精霊)ペンダント」。
上記のペンダントは18-19世紀の二つの時代に分かれて作られたことから、おそらくもともと胸飾りでその時はおそらく逆向きにつけられていたのではないかと推定できます。
ピューリタンは、ノルマンディーのサンエスプリのジュエリーは、葡萄の房をくわえていることが多く、それは豊穣を象徴しているというでしょう。
サンエスプリで、石は必ずクローズドセッティングで固定されています。
サンエスプリで用いられた宝石はダイヤモンド、あるいは無色か色のついた鉛ガラスです。
下記は当店扱いの「鳩(ハト)のブローチ」。
一方のツバメは数世紀に渡り、、健康と富、忠誠心を表すと信じられてきました。
巣作りをして一羽のパートナーと生涯を共にすることから、長く幸せな家庭のシンボルとされてきました。
19世紀のイギリスで「しあわせを運んでくる鳥」としてジュエリーのモチーフとして流行します。
下記は当店扱いのツバメをモチーフにしたペンダントです。
数羽連なって群れで飛ぶ姿が美しいです。
鳥がモチーフになったジュエリーで一人、フランスの有名なジュエラーをご紹介しておきます。
フランスの稀代のジュエリーデザイナー(特に活躍するのは1940-50年代です)に、ジーン・シュランバーゼー(Jean Schlumberger)がいます。
フランス語読みですと「シュルンベルジェ」ですが日本ではシュランバーゼーで紹介されることが多いようです。
シュランバーゼーは1907年、フランスのアルザスに生まれます。
早くも10代の頃には才能を認められ、その独特の感性と個性的な趣向を凝らしたデザインが当時の上流階級で人気を博し、後にティファニーの専属デザイナーになります。
1956年には海や鳥などの自然界をモチーフにしたジュエリーで一躍有名になります。
特にバード・オブ・パラダイス(楽園の鳥)は、シュランバーゼーを代表する作品です。
下記はシュランバーゼーが1956年ティファニー社のために製作した「A bird of paradise」。
大粒の石は、グリーントルマリン。
「宇宙の不規則なものをキャプチャーしたい」という言葉を残しており、そんなシュランバーゼーは、「宝石の詩人」とも呼ばれました。
アンティークエピソード集のページでは、様々なアンティークに関するエピソードをご覧いただけます。
アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアス、アンティークブレスレット等、希少なヨーロッパのアンティークジュエリーを随時100点以上揃えています。
シェルシュミディで取り扱うアンティークジュエリーは、全てオーナーが直接フランス、イギリスを主としたヨーロッパで買い付けてきたものです。